「人が足りない」は本当か?目の前のアプリ開発に飛びつく前に知るべき、DXの本当の目的。

現場のリアル

前回の記事では、DXを進める上での「要件定義のイメージ」についてお話ししました。

「よし、課題も見えてきたし、さっそくアプリを作ろう!システムを開発しよう!」と、目の前の業務にワクワクしながらトライしようとしている方も多いかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。

いざ現場で「DXをやれ」と言われても、実は「現状、困っていることってあるようで、そんなにないなぁ…」なんて感じたことはありませんか?

目の前の狭い業務だけを見てシステム化しようとするよりも、まずは一歩引いて、「そもそも、なんで今DXが必要なんか?」という大きな視点・マクロな視点で現場を見てみることが、実はめちゃくちゃ大事なんです。

ということで今回は、よく耳にする「人手不足」という大きなテーマから、私たちの現場のリアルに迫ってみましょう。

1. 「人手不足」のホントのところ、知ってます?

よくメディアで「2030年問題で人手が足りなくなる!」って脅されますけど、実際の現場にいると「そこまででもないで?何となく回ってるし」と感じることも多いはずです。

ここで、少し大きい視点(お堅い統計データ)を見てみましょう。

  • 労働力人口の予測(JILPT推計):何も対策をしなければ、2022年の6,902万人から2040年には6,002万人まで減る見通しです。でも、女性や高齢者などの労働参加が進むシナリオでは、2030年時点で6,940万人と、2022年より少し増える可能性も示されています。
  • 企業のリアルな声(日銀短観・労働経済動向調査):じゃあ人が余ってるんかというと、そうでもない。各種データ(雇用人員判断D.I.など)を見ると、製造業・非製造業問わず、圧倒的に「人が足りん!」と答える企業の方が多いのが現実です。

つまり、統計が示しているのは「日本全体で単純に人が消えてなくなる」のではなく、「必要なところに人が足りていない」というミスマッチの状態なんですね。

2. 人が足りないんじゃない、「ムダな作業に人が吸われてる」だけ

大きな視点データから、一つの仮説が浮かび上がります。

「現場に人はおる。でも、付加価値を生まない作業に人が吸われすぎてるんちゃうか?」

働く人はいるのに、1人あたり・1時間あたりが生み出す価値が低い。これが日本の現場が抱える本当の課題です。

2030年問題を前に、私たちが本当に考えなあかんのは、

  • ❌ 「人が減るから、新しい人を採ろう(またはアプリで人を減らそう)」
  • 「今のやり方のまま人が減ったら回らんから、仕事を減らす・変えるアプローチをしよう」

という発想の転換です。特に製造業や現場業務では、以下のように分けて見ると実態が見えます。

見る観点問うべきこと(現場のリアルな疑問)
必要人員本当にその人数が必要か?
作業量付加価値作業と非付加価値作業の比率はどうか?
待ち時間材料待ち、判断待ち、承認待ちはないか?
探す時間情報・備品・図面・履歴を探していないか?
入力作業同じ情報を何回も入力していないか?
確認作業人による確認が本当に必要か、システム化できるか?
属人化ベテラン不在時に業務が止まらないか?
手戻りミス・再確認・やり直しが多くないか?

3. だからこそ、現場の「リアルなデータ」が必要になる

「うちの現場はムダが多い気がする」「あの工程、ちょっと人使いすぎちゃうか?」

そう薄々気づいたとしても、勘や経験だけで会社を動かすのは難しいですし、現場の作業員さんも「俺らは一生懸命やってる!」と反発してしまいます。

だからこそ、「本当にムダが潜んでいるのはどこか」を証明するデータが必要になります。

よく「とりあえず紙の日報をデジタル化しよう」と言って、現場にタブレットを入力させるだけの『形だけのデジタル化』で終わってしまうケースがありますよね。「入力がめんどくさくなっただけやん!」と現場から不満が出るのは、その先にある目的が見えていないからです。

紙をデジタルに置き換える本当の意味は、綺麗に入力することではなく、現場のリアルな実態(待ち時間や手戻りの回数など)を「自動的にデータとして蓄積するため」なんです。

4. データを武器に「仕事のやり方」を変える(これぞ本当のDX)

データが集まってくれば、次は「作業の見直し」です。集まったデータを閲覧や解析できるツールで可視化すると、それまで見えなかった「真実」が丸裸になります。

  • 「人が足りない」と思っていたのに、実は『材料待ち』の時間に半分以上の人が吸われていた
  • 「ベテランの作業が遅い」と思っていたら、実は『図面を探す時間』に手こずっていただけだった

原因がここまで特定できたら、もう「人を増やす」なんて力技は必要ありません。「じゃあ、材料の配置を変えよう」「図面をシステムで一発検索できるようにしよう」と、仕事のやり方そのものを変える(=トランスフォーメーション)ことができます。

これこそが、私たちが目指すべき本当のDXです。

「人を減らす(クビ切り)」ためのDXではなく、「人が減っても、現場に無理をさせずに、当たり前に回る仕組み」を作るためのDX。

そのためには、まず足元の「データ収集(紙のデジタル化)」から始めて、現状を正しく知ることが、1番確実で、現場にとっても旨味のあるスタートラインになります。
しかし、この現場のデータ採りって難しい課題なんですよね。

💡 今回のまとめ(これだけは持って帰ってね!)

  • DXは、人を「減らす」ためでも、無理に「採る」ためでもない。
  • 紙をデジタルに変えるのは、現場の「ムダ時間の正体」をデータで暴くため。
  • 目指すのは、「人が減っても、現場に無理をさせずに当たり前に回る仕組み」

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