世界の経営学から学ぶ!DX・AI時代に中堅中小企業がイノベーションを起こす方法

現場のリアル

はじめに:あるセミナーでの衝撃と、この記事の言い訳

先日、とあるセミナーに参加して、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授のお話を伺う機会がありました。テレビやメディアでも大活躍されている入山先生ですが、生で聴く講義はとにかく圧倒的で、めちゃくちゃ面白かったんです。

テーマは「世界の経営学からみるDX・AI時代の中堅中小企業のイノベーション」。

あまりの熱量に圧倒され、実は内容のすべてを克明に覚えているわけではないのですが(先生ごめんなさい!)、経営の本質を突いたお話の数々に、私の脳みそは完全にシビれてしまいました。

「この興奮と学びを、自分の中だけで終わらせるのはもったいない!」 「DXやAIの荒波に立ち向かう、多くのビジネスパーソンに届けたい!」

そう思い立ち、セミナーの記憶の断片と、ネット上にある入山先生のこれまでの発信や最先端の経営学の知見を勝手にマッシュアップし、肉付けしてこの記事を書き上げることにしました。

(※入山先生、ご覧になって「そんなこと言うとらんわ!」と怒られるようでしたら、ソッコーで削除しますので、何卒温かい目で見守っていただけると幸いです……!)

それでは、世界の経営学が明かすイノベーションの真実へ、一緒に旅を始めましょう。

イノベーションの本質:スティーブ・ジョブズが遺した「箱を繋ぎ合わせる」という真実

まず、私たちが真っ先に誤解を解かなければならないのが、「イノベーション」という言葉の本質です。 多くの人は、イノベーションと聞くと「これまでに地球上に存在しなかった、誰も見たことがない画期的な新技術や大発明をゼロから生み出すこと」だと思いがちです。しかし、世界の経営学において、その認識は明確に否定されています。

ここで、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズの有名な言葉を思い出してみましょう。彼はかつて、クリエイティビティやイノベーションについて、こんなニュアンスのことを語っていました。

「クリエイティビティとは、単に物事(点や箱)を繋ぎ合わせること(Connecting things)だ」

イノベーションとは、ゼロから何かを生み出すことではありません。「すでにこの世に存在している既存の要素(業務、作業、技術、知見という『箱』)を、これまでにない新しい形で組み合わせること」、これこそが本質なのです。

例えば、あのiPhoneだって、中身を細かく分解すれば「携帯電話」と「PC」と「デジタルカメラ(あるいはiPod)」という、すでに世の中にあった『箱』を美しく繋ぎ合わせたものに過ぎません。

リソースに限りのある中堅・中小企業が、「我が社には世界を驚かせるような新技術なんてない」と諦める必要は一切ありません。自社がこれまで培ってきた「箱」に、現代の「DXツール」や「生成AI」という新しい「箱」をポンと繋ぎ合わせる。それだけで、立派なイノベーションは成立するのです。

イノベーションの最重要理論:「知の探索」と「知の進化」

では、その「箱を繋ぎ合わせる」ために、企業はどう動けばいいのでしょうか。ここで登場するのが、入山先生の代名詞とも言える経営学の最重要理論「両利きの経営(Ambidexterity)」です。

世界的な経営学者チャールズ・オライリーらが提唱したこの理論では、企業が生き残るための活動を「知の進化」と「知の探索」の2つに分類しています。

① 日本企業が圧倒的に強い「知の進化」

「知の進化」とは、すでに自社の中にある技術や知見(箱)を、さらに深掘りして磨き上げることです。

  • 既存製品のクオリティをさらに高める
  • 業務のムダを削ぎ落としてコストダウンする
  • 熟練の職人技をさらに洗練させる

これらはまさに、日本のものづくり企業や、真面目に顧客と向き合ってきた中小企業が、歴史的に大得意としてきた領域です。

② 日本企業が圧倒的に弱い「知の探索」

一方で、イノベーションの源泉となるのが「知の探索」です。これは、自分の専門分野や現在のコンフォートゾーン(快適な領域)から遠く離れた世界を見渡し、まだ見ぬ新しい「知の箱」を探しに行く活動を指します。

  • 異業種の人脈と交わる
  • 全く新しいデジタルテクノロジーに触れてみる
  • 海外のトレンドや、若者のカルチャーに首を突っ込んでみる

入山先生のセミナーで最も危機感を覚えたのは、「日本企業は、この『知の探索』が圧倒的に弱い」という指摘でした。

なぜ弱いのか。理由は明確です。知の探索は、性質上「10回挑戦して9回は失敗する(成果が得られない)」ものだからです。 「時間とコストをかけて他業界の展示会に行ったけれど、自社のビジネスに直結する収穫はなかった」 「新しいITツールをテスト導入してみたけれど、社員に定着せず無駄金になった」

効率や確実性を重んじる日本の企業文化(特に余裕のない中小企業)では、こうした失敗に対して「無駄なことをした」「予算の無駄遣いだ」と冷たい評価を下しがちです。その結果、誰もリスクを冒して遠くを探さなくなり、自社の中にある古い箱をこねくり回すだけの「知の進化」に偏ってしまうのです。

しかし、現代のように変化の激しいDX・AI時代において、知の探索を止めることは「じわじわと訪れる死」を意味します。大きくイノベーションを起こし、持続的に成長している企業は、例外なくこの「知の探索」を仕組みとして実践しているのです。

現場の目線で考える:イノベーションを「自分たちの業務の箱」に落とし込もう

さて、ここまで世界の経営学の小難しい理論をお話ししてきましたが、ここで一度、私たちの「現場の目線」にグッと引き戻して考えてみてほしいのです。

「イノベーションなんて、経営陣や企画部門が考える大きな話でしょ?」 「ウチみたいな現場の作業員には関係ないよ」

もしそう思われているとしたら、それはめちゃくちゃもったいない誤解です。先ほど、スティーブ・ジョブズの言葉を借りて「イノベーションとは、既存の『業務や作業の箱』を繋ぎ合わせること」だとお伝えしました。 それなら、毎日現場で泥臭く手を動かし、誰よりもその「箱」の中身を熟知している現場のあなたこそが、イノベーションを起こす主役になれるはずなんです。

一度、皆さんが毎日やっているルーティンワークや作業を、ひとつひとつの「独立した箱」としてイメージしてみてください。 「このデータをエクセルに入力する作業(箱)」 「この部材を倉庫から運んでくる作業(箱)」 「顧客からのクレームを日報に書く作業(箱)」

これらの箱を、どうすれば新しく繋ぎ合わせられるか、どうすればイノベーションを起こせるか。そう考えたら、なんだか自分たちにもできそうな気がしてきませんか?

「隣の部署を見る」ことも立派な『知の探索』である

ここで、入山先生の「知の探索は移動距離に比例する(外を見ないと生まれない)」という話が繋がってきます。

現場の業務をイノベーションしようと思ったとき、自分のデスクの前にじっと座って、自分の担当作業(箱)だけを睨みつけていても、新しい組み合わせなんて絶対に生まれません。やっぱり、外を見に行く必要があるのです。

でも、その「外」というのは、何も大層な海外視察や異業種交流会である必要はありません。中小企業の現場における最大の「外」への一歩、それは「他部署を見に行くこと」です。

  • 営業の現場を見に行く: 「なんでいつもこの書類の提出が遅れるんやろ?」と開発や総務の人が不満に思っていたら、営業の現場を覗いてみる。すると「あ、外出先からスマホで入力しにくい画面になってるんか!」という、繋ぐべき新しい箱(課題)が見つかります。
  • 製造の現場を見に行く: 事務職の人が工場のラインを見に行けば、「この手書きのチェックシート、ウチの部署で使ってるあのデジタルツールに入れ替えたら、一瞬で共有できるやん」と気づくかもしれません。

他部署の「同じ悩み」を一緒に解決する

さらに強力な鍵となるのが、「他部署が抱えている同じような問題点を、一緒に解決する」というアプローチです。

縦割りになりがちな組織では、A部署もB部署もC部署も、実は「似たような無駄な作業」や「同じようなシステムの使いづらさ」に別々に頭を悩ませていることが本当によくあります。 それぞれの部署が、自分の殻にこもって「ウチの部署の問題」として個別に解決しようとするから、小さな改善(知の進化)で終わってしまうのです。

勇気を出して部署の壁を越え、「なぁ、そっちの部署でもこれ困ってへん?」「あ、ウチもそれ困ってた!」「じゃあ、一緒に解決する仕組みを作ろうや」と手を取り合う。 これこそが、社内における「知の探索」であり、業務と業務の箱を大胆に繋ぎ合わせる、現場発信の強力なイノベーションになります。同じ問題を抱える仲間を見つけることは、イノベーションを引き起こす最大の起爆剤なのです。

おわりに:経営者も現場も、みんなで「一歩」だけ動いてみよう

かつては、遠くの知を探索するためには、莫大な予算や組織の大きな決断が必要でした。しかし、今は令和の「DX・AI時代」です。部署の壁を越えて繋がるためのチャットツールも、業務の箱を繋ぎ合わせるための便利なITシステムも、安価でいくらでも転がっています。

歴史上、最も「知の探索」にかかるコストが下がっている今だからこそ、リソースがない、時間がない、というのは言い訳になりません。

大企業のように重たい承認プロセスがない中堅・中小企業だからこそ、現場の「これ、隣の部署と一緒にやってみません?」という一言や、経営者の「お、おもろそうやん、一回やってみ!」という軽いフットワークひとつで、明日から会社をガラリと変えるイノベーションが起こせるのです。

まずは、自分の周りにある業務の「箱」をバラバラに切り分けて、眺めてみることから始めてみませんか?そして、隣の部署の箱、あるいは外にある新しいAIの箱と「繋ぎ合わせる(Connecting the dots)」ために、ほんの少しだけ、席を立って動き出してみましょう。

……と、ここまで現場の目線に落とし込んで偉そうに語ってきましたが、これらはすべて、入山章栄先生の素晴らしいセミナーから私が勝手にインスピレーションを受け、熱量だけで現場向けにカスタマイズして書き殴った内容です。※申し訳ございません。

現場ではたらく皆様の日常に、何か一つでも新しい「繋ぎ合わせ」のヒントが生まれれば最高に嬉しいです。みんなで一歩だけ動いてみませんか。

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