みなさんの会社では、自社でアプリやシステムを作ったりしていますか?
「いやいや、うちはIT企業ちゃうし、そんな専門知識のある人材もおらんよ」と思われるかもしれません。でも今、製造業をはじめとする多くの現場で「自社開発」がもの凄い勢いで増えているんです。
背景にあるのは、「ノーコード・ローコードツール(kintone、Power Apps、Glideなど)」の爆発的な普及です。 昔ならプログラミング言語をバリバリ書けるIT人材を雇わなあかんかった大掛かりなシステム開発が、今やパズルみたいに画面や機能を組み合わせるだけで、誰でも簡単にアプリを作れる時代になりました。
これにより、現場のちょっとした「Excel管理をアプリにしたい」「チェックシートをデジタル化したい」というニーズが、外注せずに「自分たちで、安く、早く」解決できるようになっています。
さらに、システム会社への「外注」にはどうしても、
- お金がめちゃくちゃかかる
- 現場の細かい要件を伝えるのが難しい
- ちょっとした修正にも時間がかかる
という限界があります。現場の業務は日々変わるもの。「今すぐこのチェック項目を増やしたい!」というスピード感に応えるには、その場で修正してすぐ使える自社開発(特にノーコード系)の強みが、今の現場には必須になってきているわけです。
そんな中、よく耳にするのがこんな会話です。 「隣の部署が自前で作ったあのアプリ、うちの部署でも使えそうやん? ちょっとコピーさせてや!」
イチから作るより手っ取り早いし、パクれるものはパクろうという精神は当然です。しかし、ここにすでに多くの担当者が踏み抜いてきた「地雷」が大量に埋まっています。
「隣のアプリをそのまま持ってきただけなのに、なぜか現場が激怒して使われなくなった……」 そんな悲劇を防ぐために、自社開発で絶対にハマる2つの落とし穴と、私がたどり着いた「横着なシステム思考」の重要性についてお話しします。

■ 落とし穴①:そもそも「パクられる前提」で作られていない
一番多いのが、コピーしたアプリをいざ自分たちの部署に合わせようとしたら、結局「イチから作り直した方が早かったわ……」となるパターンです。
なぜこれが起きるかというと、最初の開発段階で「他の部署でも水平展開できるようなデータ構想」になっていないからです。
現場の作業の進捗、記録の仕方、承認ルートの数……これらは部署ごとに微妙に違います。その違いを吸収できるような「ゆとり(拡張性)」を持たせずに、特定の部署のやり方に100%最適化して作ったアプリは、他の部署に持っていった瞬間に完全に機能不全を起こします。
共通アプリを開発するときは、この部署ごとの違いを最初の段階で「揉みに揉む」必要があるのですが……このあたりは要件定義のめちゃくちゃ重要な話になるので、次回の記事でじっくりお話ししますね。
■ 落とし穴②:開発者の「自己表現(エゴ)」が詰まりすぎている
これが一番タチの悪い落とし穴です。 自社でシステムやアプリを簡単に作れるようになると、開発者(社内のIT担当やちょっと詳しい社員)はこう思います。
「自分の持ってる知識と最新の技術を、めいっぱい披露したい!」
その結果、アプリの中に「あれもこれも」と、現場が求めてもいない高機能や便利そうなボタンをこれでもかと盛り込み始めるんです。完全に、開発者の自己満足の発表会状態です。
前回の記事でも書きましたが、現場は1ミリもそんなものを求めていません。 アプリのボタンがワンアクション追加される、画面の遷移が1回増える。たったそれだけのことで、忙しい現場の作業員は「あ、めんどくさ。もう使わんとこ」ってなるんです。
■ 結論:システムは「シンプル・イズ・ベスト」そして「横着」であれ

じゃあ、社内アプリ開発で失敗しないためにどうすればいいのか? 私の持論(私見)ですが、「考え方を徹底的にシンプルにして、横着になること」が実は最強の特効薬やと思っています。
開発するときは、次の2つの視点を絶対に忘れてはいけません。
1. 機能は「必要最低限」まで削る
現場が使う機能は、本当に1つか2つで十分。開発者のエゴを捨てて、「これ以上削ったら動かん」というレベルまでシンプルにします。ボタン1つ押すだけで終わる、横着者が泣いて喜ぶようなデザインが正義です。
2. データ構想だけは「全体最適」を目指す
画面はシンプルでいい。でも、裏側のデータの持ち方(データベースの設計)だけは、将来他の部署がパクっても耐えられるように、広く、深く、全体を見据えてカチッと作っておく。
「言うのは簡単やけど、検討するのはめちゃくちゃ難しい」のがこれなんです。
■ DX推進者は、現場に「旨味」を持ち込むネゴシエーターであれ

システム作りで迷ったら、一度立ち止まって、私のように「徹底的に横着な作業員の目線」になってみてください。
「これ、もっとボタン減らせへん?」 「今のめんどくさい業務、このアプリ入れたら丸ごと無くせるん?」
その横着な視点からスタートして、もし現場の業務フローを変えなあかんのであれば、変えた先にそれ以上のリターン(楽になる未来)をちゃんと用意する。
DX推進者の本当の仕事は、現場に不満を持ち込ませる役割じゃない。現場の業務を変革する代わりに、彼らが泣いて喜ぶほどの「旨味」をガッツリ持ち込んで合意を取り付ける、最高のネゴシエーター(交渉人)になることなんです。
仕様に現場をハメ込むだけのゴミアプリ量産で終わるか、現場と一緒に大改革を起こすか。 その分かれ道は、あなたが現場とどんな「旨い取引」ができるかにかかっていますよ。


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